ちーちゃんとママ

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あまりにも赤色が綺麗だったから、近くのコンビニに車を停めて山に登った。それは私が通った小学校の横にある、頂上まで10分かからない小高い山。(山というには少々小さい気もするけれど、小学校の校歌にまで名前を入れて盛大に讃えているので山としておく)
 
錆び付いた手すり、石の階段には落ち葉がこんもりと積もっていて全く人の気配がない。コンビニから山までは誰ともすれ違わず、車すら通らなかった。この辺りはいつもこんな感じ。お客さんが全く入ってないとはいえ、停めさせてもらうお礼のつもりで、コンビニで買った焼き芋とお茶が入った袋を手にぷらぷらと登っていく。ピクニックのようで楽しいけれど小学校ぶりに登る山道が意外とキツく、こういうところで体力の衰えを実感する。ふうふう言いながら中腹で立ち止まり振り返ると、私の街が一望出来た。ちょっと感動して、また登りだす。もうすぐお別れになる『私の街』をこうして見渡しているこの状況、唐突に行動したにしてはなかなかいい感じじゃないか。
 
頂上が近づいてきたその時、どこからか小さい子どもの声がした。不思議に思って頂上に目をやると、小さな赤ちゃんを抱っこ紐で抱いた、どこかまだ幼さの残る可愛らしい女性がぽつんとそこに佇んでいた。胸元の赤ちゃんは小さな声でふにゃふにゃと泣いていて、彼女は赤ちゃんに話しかけながらとんとんゆらゆら揺れている。見た目は幼くても、立派にお母さんだ。
 
人の気配が全くないところで出くわした予想外の状況にお互い驚いて、様子を窺うような感じになってしまったので思いきってこちらから「…こんにちは!」と声をかけた。少しほっとした顔の彼女からも「こんにちは」と返ってくる。そうして近づいてきてくれたので、赤ちゃんにも「こんにちは」と挨拶をする。突然現れた見知らぬ人ににこにことしてくれる。かわいい。
 

いいお天気ですね
紅葉すごくキレイですよね
お互いびっくりしちゃいましたね
おばあちゃんかおじいちゃんかな、って思ってました
わたしも
 
わたし達は名前も名乗らずに、他愛もない話をして笑いあった。私は、すぐそこの小学校に通っていただとか…彼女は、遠く離れた街から越してきて近くのアパートに住んでるだとか…今日旦那さんはお仕事だとか。そんな断片的な身の回りの話なんかをした。結婚してるんですか?と聞かれたから「いえ」と返す。たまたま出会ったこの子にわざわざ自分の離婚について説明するのは馬鹿らしいし、それにここ最近、動揺を見せずに随分スムーズに返せるようになったからそのままの意味にとって返す。嘘は言ってないし。
 
 
──もうすぐ東京に行くんですよ。


なんだか少し込み入った話をしたくなったのはどうしてだろう。少しセンチメンタルな気持ちになってたのかもしれない。彼女は目をまん丸にして「えっ!すごいすごい!」と笑った。あっちで勉強して働くつもりだからもうこっちに帰ってくるつもりもないと言うわたしに、彼女は「いいなぁ、わたしもやりたいことあったんですよね~」と赤ちゃんを抱きしめ直した。
「看護師の学校に行こうと思ってたんです、でもお腹にこの子がいるのがわかって」
そう言って愛おしそうに赤ちゃんの頬を撫ぜるその姿はとても幸せそうに見えた。夢を諦めた可哀想な女の子の姿じゃない、もっと大切なものを手に入れた母の強い姿だ。
 
わたしも若い自覚があるけれど、それに輪をかけて若い彼女になんだか励ましの言葉をかけたくなって「大丈夫、わたしなんて離婚して東京に一人で行こうとしてるんだから!」とぶっちゃける。また目を丸くして驚く彼女がおかしくて笑った。正しい励まし方ではなかったかもしれないけど、要するに「なんとでもなるよ」と言いたかった。多分、新しいことは始めようとすれば何歳でも始められるのだ。看護師にだって、諦めなければきっとなれる。
 
 
「お互い、がんばりましょうね」
そう言って彼女と別れた。お母さんになって間もない彼女と心機一転して新天地に旅立とうとしているわたし。置かれている環境や状況は大きく違っても、毎日不安になって心配したり、上手くいかなくて嫌になったり、新しいことにわくわくしたり……なんだか似ている。名前も知らない彼女のことをわたしは、なんだか盟友のように思う気持ちになっていた。
 

 


道端で出会っていたら、きっと声をかけなかった。ふにゃふにゃと泣いてる赤ちゃんを大変そうだなぁと横目で見て通り過ぎてただろうな。
そんなふうに考えながら、すっかり冷めてしまった焼き芋とお茶を一人になった山頂で食べた。冷めているのにたまらなく美味しく思った。
 
  
 
いつか、お母さんと大きくなったあの赤ちゃんに会えたらいいな。あれからわたし達がんばりましたね、と言い合える奇跡が起こるといいなと思う。

「わたしの星2019」を見に行ってきたよ①

「わたしの星」を見に大阪へ行ってきたよ。

二年ぶりに見るこのお芝居。今でも二年前の夏を思い出すと胸の奥がキュンとするほどに素晴らしい作品。キャスト・スタッフともに参加するのは、現役の高校生たち。

あらすじ
夏、未来、宇宙。
火星移住が進み、過疎化した地球。
残された高校生たちは文化祭の準備に明け暮れていた。
夏休み最終日、スピカは幼馴染の同級生に転校を告げ、姿を消す。
突然の別れは、彼らの日常を、彼ら自身を、変化させる。
憧れ、成長、挫折、叶わぬ夢、もう帰れない場所。
カセットテープに録音された思い出が宇宙の片隅で再生される。
星に引力があるように人にもきっと引力がある。
たとえどれだけ離れても、あなたはずっとわたしの星。

くわしくは素敵なHPを見てください。
わたしの星

今年も過去作に負けず劣らず、素晴らしい作品に仕上がっていました。特にグッときた場面や個人的に感じたことを書き残しておきたい。
ネタバレガッツリしちゃうので、これから見る人は読まないように!見に行ける人はぜひ見に行って!(というか、見てないとピンと来ないと思う)

※文章内の台詞はニュアンスで書いてるので、正しい言葉はDVDが届いたら書き直します。


「「「「「「「「「

かわいいは便利だ。

最近の女子高生は、なんでも「かわいい」でこと済ませてしまう。と、いつだったかテレビで見た。でもそれは、多分女子高生だけじゃない。大人だって軽率に「かわいい」を使う。大抵の好意的な感情は、かわいいで表現出来てしまうから。好意を寄せていることを表すには軽々しくも、最適な言葉だと思う。かわいい。かわいー。可愛い。

犬、かわいい。
猫、かわいい。


高校生、かわいい。



2017年の夏、舞台の上で駆け回り真っ直ぐにキラキラ輝く彼女たちを見て、わたしは打ちのめされていた。そして、あの時確かに思っていた。

「高校生って…なんてかわいいんだろう……!」って。


わたしの星2019では、過去の公演にはいなかった「女子高生の幽霊」が登場する。2019年に命を絶った彼女は高校生たちの一連のやり取りをそっと見守っている。唯一、霊能力が備わっている少女とほんの少しだけやり取りをする以外は基本的に見守るスタンスを崩さない。


ラストシーン。
かつて女子高生だった幽霊に、未来の女子高生はこんなことを言った。

あなたたちがもっとちゃんとしてくれてれば、わたしたちはこんな思いをしないで済んだのに。
わたしたちのことを眺めて、かわいいだとか言わないで。
わたしたちは、ただ必死なんだから。


その台詞が放たれるその時までわたしは、彼女たちが感じている現状への窮屈さや焦りから、痛みをはらんでぶつかり合うことで発生するキラキラした感情の欠片を拾い上げて「かわいい」の4文字でコーティングして眺めていたのだと…都合よく消費しているのだと、言い当てられたようで、瞬間、肝が冷えた。

遠い未来の高校生たちに想いを寄せて、彼女たちのやり取りを我が事のように懐かしく感じていたのに。そして、そこは確かに未来の地球で未来の日本なのに。それなのに、何故だかわたしはどこかで“繋がっていない”と思っていた。“未来からやってきたネコ型ロボット”に注ぐ感情と同じような感傷で、彼女たちを見ていたんだと気付かされる。

そんなわたしに未来の女子高生は、幽霊の少女を媒介してド直球のストレートを投げてきた。


あ 繋がった、と思った。

というか、そもそも繋がってたんだ。
初めから繋がってたのに、気づかなかったんだ。彼女たちが生きる壊れた星を現在進行形で壊しているのは、他の誰でもない、かつて高校生だったわたしたち。

「わたしの星」は単なる青春譚じゃない。彼女たちは人のいなくなっていく星に、取り残されている子どもたちだ。ひとり、またひとりとクラスメイトがいなくなっていくたびにロケットを見送って。いつの間にか見送った人数の方が増えて、気付けば数えられる方になっているような。そんな鬱屈とした世界で生きる子どもたちの物語だ。

過去二回、三鷹で上演された時にはこの最後のくだりはなかった。シチュエーションは同じでも、どこかファンタジックで夢見心地、切なさや愛おしさでいっぱいの舞台だったのだ。

だけど「どうして?」とは思わなかった。

だって、もう、二年前とは違うから。
今この世界がいろんな意味で芳しくない状況なのは、誰の目にも明らかで。彼女たちにこう言わせてしまうところまで来てるのが分かってしまうから。
だから「どうして?」だなんて言えなかった。

眩いばかりの青春の煌めきを、ただ平和的に享受出来る時代は終わったのだと容赦なく突きつけられたようで息が止まりそうになった。


暗転後に笑顔でステージに現れる彼女たちを見て、心からの拍手を送りながら
「……やっぱり、高校生、めちゃくちゃかわいいなぁ…」
なんて思って、少し罪悪感を覚えてしまったけど。
それなら「かわいいなぁ」って呑気に笑い合える世界にすればいいんだよなと思い直す。


未来に住む、あの子達のために。
火星に移住しなくて済む世界にしましょうよ。ね。

あなたのその手から、その血塗れの鈍器が離れますように。

まぁ、ね。いつか来るとは思ってたんですよ。

尻字への怒りのお問い合わせ。

④をアップしたときになにかしら来ることを覚悟してたのにびっくりするほど来なくって、楽しく読んでくれてよかったなってほっとしてたんですけどね。


きましたよ。


でもそれは、わたしのところでもうつぼさんのところでもなく、大っぴらにはツイートしてなかった同室のお友達のところに、捨て垢で。

 


……ねぇ、なーんでそっち行っちゃうかなあ。

 

 

 

彼女にメッセージを送ったあなたがあの日あの場にいたうちの一人なのか、それともそうでないのか……わたしたちには読み取ることが出来ません。でもわたしたちじゃなく、わざわざ彼女を選んで言葉をぶつけられる人間ってことは、ある程度あなたの属性の予測はつくんですよ。その予測をつけた上で、わたしは今、ただただやるせない気持ちでいます。本当にむなしい。

 

尻字をしてもらったことについて、もしくは、レポにその様子を書いたことについてお怒りなのであれば……わたしがあなたにしてあげられることはたったひとつです。説明しますね。


まず、Twitterを立ち上げてください。そして、嫌かもしれませんがわたしのアカウントを開いてください。検索したくない?じゃあリンクを貼っておきますね。

https://twitter.com/lilicaaaaallll
そしたら、プロフィールの上に丸の中に小さい丸が3つ並んだマークがありますね。「@lilicaaaaallllさんをブロック」って出ますよね。そう。それをタップしてください。

 

……さぁ!これであなたのTLがとっても過ごしやすいものになりました!

よかったですね!さようなら!!

 

………わたしがあなたに慈悲をもってアドバイスしてあげられるのはそれだけです。それ以外なにもありません。残念ですが。

 

 

 

今回レポを書こうと決めた時、どこまで書くかは正直とても迷いました。それでも迷った末に全部書きました。これを読んで誰かの中のちばくんのイメージが変わったとしても、それはきっといい意味で変わるという確信があったからです。お部屋訪問でちばくんと接した、私たち自身が確信をもっているんです。

だって、私たちがそうだったから。

 


レポの中には情景が伝わりやすいようにあとから付け足した言葉もあれば、文章では直接的すぎてニュアンスが伝わりにくいからとあえて削った言葉もあります。ハンドルネームとはいえ、自分の名前を出してインターネットの海に流すんですから、それなりの責任感と覚悟はもっています。拙いですが、きちんとそれなりの読み物になるようにブラッシュアップしました。それでも意図しない形でねじ曲がって伝わってしまっていたなら、それはわたしの力不足です。精進します。

 


人にはそれぞれの尺度があります。

正しいこと、間違っていること。

許せること、許せないこと。

誰一人として同じ尺度の人はいないでしょう。家族であっても、恋人であってもどこかしら違う。それは人間だから当たり前のことです。むしろそうじゃないとおかしい。お互いを尊重し合っていれば、一緒なわけがないんだから。


怒っているあなたは、どの尺度で怒っているのでしょうか。あなたの尺度で怒っていますか?あなたの尺度で怒っているのなら、あなたの心身の健康のためにさっきのブロックを遂行していただくしかありません。あなたの尺度は気に入らない人をぶん殴るためのものではないからです。

 

そうではなくて、もし、本人以外知り得ないちばくんの尺度を持ち出して怒っているのなら……それは本当にやめた方がいいです。

 

わたしはそれが一番こわい。


彼に代わって正義の鉄槌のつもりで振り回しているそれは、ただの鈍器です。そこにあなたの好きな人の意思は欠片もありません。だってそれは彼のものではないからです。わたしたちに振り上げたその鈍器は、いつか、他の誰かにまた振り下ろしたくなる日が来ます。これは彼のためにやっているという信条に基づいているせいです。でも、それはあなたの大好きな人の未来を潰すことにもなりかねない。大袈裟なんかじゃない。本当にそうなんです。


あの部屋のあの空気感を知っているのは、ちばくんと私たち四人と隣で笑いながら見ていたスタッフさんだけです。全員初参加で緊張している私たちに、お得意の下ネタツッコミをもって笑わせてくれたあのちばくんを、あの、一気に空気が和らいだ瞬間を知っているのはわたしたちだけなんです。あの場にいる全員が「一分使ってやることじゃないよねえ」って、バカバカしさを共有しながら楽しく過ごしたのは、あなたじゃない。

 


あなたが捨て垢で覚悟もなくメッセージを送った彼女が消えて、あなたはスッキリしましたか。