「わたしの星2019」を見に行ってきたよ①

「わたしの星」を見に大阪へ行ってきたよ。

二年ぶりに見るこのお芝居。今でも二年前の夏を思い出すと胸の奥がキュンとするほどに素晴らしい作品。キャスト・スタッフともに参加するのは、現役の高校生たち。

あらすじ
夏、未来、宇宙。
火星移住が進み、過疎化した地球。
残された高校生たちは文化祭の準備に明け暮れていた。
夏休み最終日、スピカは幼馴染の同級生に転校を告げ、姿を消す。
突然の別れは、彼らの日常を、彼ら自身を、変化させる。
憧れ、成長、挫折、叶わぬ夢、もう帰れない場所。
カセットテープに録音された思い出が宇宙の片隅で再生される。
星に引力があるように人にもきっと引力がある。
たとえどれだけ離れても、あなたはずっとわたしの星。

くわしくは素敵なHPを見てください。
わたしの星

今年も過去作に負けず劣らず、素晴らしい作品に仕上がっていました。特にグッときた場面や個人的に感じたことを書き残しておきたい。
ネタバレガッツリしちゃうので、これから見る人は読まないように!見に行ける人はぜひ見に行って!(というか、見てないとピンと来ないと思う)

※文章内の台詞はニュアンスで書いてるので、正しい言葉はDVDが届いたら書き直します。


「「「「「「「「「

かわいいは便利だ。

最近の女子高生は、なんでも「かわいい」でこと済ませてしまう。と、いつだったかテレビで見た。でもそれは、多分女子高生だけじゃない。大人だって軽率に「かわいい」を使う。大抵の好意的な感情は、かわいいで表現出来てしまうから。好意を寄せていることを表すには軽々しくも、最適な言葉だと思う。かわいい。かわいー。可愛い。

犬、かわいい。
猫、かわいい。


高校生、かわいい。



2017年の夏、舞台の上で駆け回り真っ直ぐにキラキラ輝く彼女たちを見て、わたしは打ちのめされていた。そして、あの時確かに思っていた。

「高校生って…なんてかわいいんだろう……!」って。


わたしの星2019では、過去の公演にはいなかった「女子高生の幽霊」が登場する。2019年に命を絶った彼女は高校生たちの一連のやり取りをそっと見守っている。唯一、霊能力が備わっている少女とほんの少しだけやり取りをする以外は基本的に見守るスタンスを崩さない。


ラストシーン。
かつて女子高生だった幽霊に、未来の女子高生はこんなことを言った。

あなたたちがもっとちゃんとしてくれてれば、わたしたちはこんな思いをしないで済んだのに。
わたしたちのことを眺めて、かわいいだとか言わないで。
わたしたちは、ただ必死なんだから。


その台詞が放たれるその時までわたしは、彼女たちが感じている現状への窮屈さや焦りから、痛みをはらんでぶつかり合うことで発生するキラキラした感情の欠片を拾い上げて「かわいい」の4文字でコーティングして眺めていたのだと…都合よく消費しているのだと、言い当てられたようで、瞬間、肝が冷えた。

遠い未来の高校生たちに想いを寄せて、彼女たちのやり取りを我が事のように懐かしく感じていたのに。そして、そこは確かに未来の地球で未来の日本なのに。それなのに、何故だかわたしはどこかで“繋がっていない”と思っていた。“未来からやってきたネコ型ロボット”に注ぐ感情と同じような感傷で、彼女たちを見ていたんだと気付かされる。

そんなわたしに未来の女子高生は、幽霊の少女を媒介してド直球のストレートを投げてきた。


あ 繋がった、と思った。

というか、そもそも繋がってたんだ。
初めから繋がってたのに、気づかなかったんだ。彼女たちが生きる壊れた星を現在進行形で壊しているのは、他の誰でもない、かつて高校生だったわたしたち。

「わたしの星」は単なる青春譚じゃない。彼女たちは人のいなくなっていく星に、取り残されている子どもたちだ。ひとり、またひとりとクラスメイトがいなくなっていくたびにロケットを見送って。いつの間にか見送った人数の方が増えて、気付けば数えられる方になっているような。そんな鬱屈とした世界で生きる子どもたちの物語だ。

過去二回、三鷹で上演された時にはこの最後のくだりはなかった。シチュエーションは同じでも、どこかファンタジックで夢見心地、切なさや愛おしさでいっぱいの舞台だったのだ。

だけど「どうして?」とは思わなかった。

だって、もう、二年前とは違うから。
今この世界がいろんな意味で芳しくない状況なのは、誰の目にも明らかで。彼女たちにこう言わせてしまうところまで来てるのが分かってしまうから。
だから「どうして?」だなんて言えなかった。

眩いばかりの青春の煌めきを、ただ平和的に享受出来る時代は終わったのだと容赦なく突きつけられたようで息が止まりそうになった。


暗転後に笑顔でステージに現れる彼女たちを見て、心からの拍手を送りながら
「……やっぱり、高校生、めちゃくちゃかわいいなぁ…」
なんて思って、少し罪悪感を覚えてしまったけど。
それなら「かわいいなぁ」って呑気に笑い合える世界にすればいいんだよなと思い直す。


未来に住む、あの子達のために。
火星に移住しなくて済む世界にしましょうよ。ね。